マルチワールドファンタジー  『ルナティクス』キャンペーン  プロローグ  秋も深まり、山々が冬景色に変わりはじめたある日、君たちは『ルナティクス』本部からの招集の連絡を受けた。  『御子』が覚醒し、本部を新たにしたので、幹部である君たちを招集するとのことである。  『ルナティクス』、近年レトラーサム公国各地を荒らす犯罪結社である。  闇に隠れし気紛れな月の女神、太陽神アプロニーデスの妹であるムーナディアを崇める宗教組織に君たちは属している。  君たちは、己の野心のため、目的のため『ルナティクス』に入ったのである。 「とうとう来たか!」  君たちの中の誰かはこうつぶやいた。組織の末端機関を取りまとめる幹部である君たちに、組織の中央に入るチャンスがめぐってきたのである。君たちはそれぞれの思惑を胸に数名の部下を引き連れて、活動本部に向かった。  本部は地下にあった。君たちと君たちの部下はそれぞれ部屋をあてがわれた。  旅の疲れを癒す間もなく、君たち幹部だけがホールに呼び出された。  ホールには君たち同様、胡散臭い連中がいた。どうやら君たちと同じ幹部らしい。 見たことがない所を考えるとどうやら他の地方で活動していたのだろう。 君たちは、お互いの値踏みをしながら大幹部の到着を待っていた。  ファンファーレがホールに鳴り響いた。君たちは、ひざまづき頭を垂れた。  ホールの一段高い所にある扉から古いプレートメイルに身を包んだ大柄な髭の男が、身を屈めて入ってきた。むき出しの腕や顔には古傷が目立っている。背にしたグレート・ソードは、君たちが見たこともないほど、また、決して振り回すことの出来ないほど巨大なものであった。『闘士』ゴルティス、知る人ぞ知る彼の名であった。  続いて入ってきたのは、全身黒尽くめの服を着、褐色の肌を持つ大柄な男だった。首にかけているアミュレットを見たところ、彼がムーナディアの司祭であることがわかる。大柄な男ではあるがゴルティスの横にたつと普通の背丈に見える。堂々たる態度は全てにおいて自信の現われに感じられる。『大司祭』ヤヌテマイオン、『ルナティクス』における最高司祭である。 「諸君、待たせたな。」  最後に入ってきたのは、派手な姿をした男だった。魔法使いの杖を手にしていることで彼が魔法使いである事が分かる。しかし、その派手派手しい姿、化粧の似合う顔は魔法使いのイメージからかけ離れたものだ。だが、それでいてその美しく響く声には彼の持つ毒気があり、体の奥底にある恐怖をにじませるに十分だった。  『大魔導師』リュースタンは、目の前に控える君たちに一瞥をくれると続けて言った。「よくあつまってくれた、今までの諸君等の活躍には感謝の念が堪えない。我らが神ムーナディア様も喜んでおられると思う。」 「諸君等に集まってもらったのは他でもない、我らが『ルナティクス』も組織が大きくなり始めた。君たちのように優秀な人材がいればこそだ。そして、さらに強大にするためには、活動の中心に優秀な人材が必要だということだ。」 「無論、これからの活動においても、優秀な人材は側にいた方が何かと都合がよいのは分かるだろう。」 「これから我々は、本格的に公国に対して進行を始める。君たちにはその尖兵になってもらいたい。その活動如何によっては、君たちの中のリーダーを選らんでもよいと思っているのだ。」 「公国の連中に我が神の信仰を広める。そして、再びムーナディア様が我らの前に降臨する。そのとき我々は、ムーナディア様の下で世界を手中に収める事ができるだろう。」 「既にムーナディア様の代弁者たる御子をお迎えしている。先日、御子はその使命に目覚められた。まさに時は来たのだ。」 「今、御子はその力を貯えるために今、眠りについておられる。しかし、目覚めるたびにその力の一端を我々のために使ってくださるというのだ。それはムーナディア様の力でもあるのだ。」 「『ルナティクス』はムーナディア様のためにある、それは忘れずにいてもらいたい。そして、その加護を得るも得ないも諸君等の心掛け一つという事だ。」 「諸君等のこれからの活躍に期待する、ムーナディア様の加護があらん事を・・」  リュースタンがそれだけ言うと、ファンファーレとともに三人は奥に戻っていった。三人の持つ圧倒的な力(オーラ)の前に君たちは恐怖にも似た感情を持ちながらも、これから始まる戦い、血と肉で行なう戦いや知恵と策謀など種々な戦いの中で、己の野心の実現を目指すのだという強気思いに駆られた。  戦いは始まったのだ。